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【かわいいだけじゃない】ごちうさというコンテンツ

まんがタイムきららMAX』にて連載中の作品『ご注文はうさぎですか?』(以下ごちうさ)は、2014年にテレビアニメ化されて以来多くの人気を集め、いまや知らない人はいないというほどの知名度を誇っています。10周年を迎えた昨年も「ご注文はうさぎですか?展 Café Lumière」が開催されるなどの盛り上がりを見せました。

gochiusa-exhibition.com

本記事では、「アニメなら見たけど、原作ってどうなの?」「キャラソンやエイプリルフール企画など展開が速すぎてついていけない…」といった方に向けてごちうさというコンテンツの全体像をお見せし、おすすめの楽しみ方をご紹介しようと思います。

注:以下の内容には絵にも音楽にも大して造詣の深くない筆者による主観が含まれます。

 

≪目次≫

 

原作

ごちうさの原作は、芳文社発行の『まんがタイムきららMAX』(以下きららMAX)にて連載中のKoi先生による4コマ漫画です。2011年3月号で連載が始まり、以来一度も休載していません。だいたい毎年1巻のペースで単行本も発行されており、昨年のクリスマスには10巻が発売されました。

アニメとの違いとして最初に挙がるのは、何と言ってもKoi先生の絵を堪能できるでしょう。キャラクターの表情や衣装、背景までもが丁寧に描かれ、光や透明感の表現も魅力的です。個人的な感想ですが、繊細さや色彩の豊かさで言えばアニメ絵と比べても圧倒的と言えます。

また、原作であるからには当然まだアニメ化されていない先の話を読むことができますチマメ隊の中学卒業、都会旅行編、新キャラの登場などに加え、ココア達の将来についての示唆など、ただの日常モノとは言わせぬ展開には惹き込まれること間違いなしです。

そんな原作が気になる!という方、是非単行本を買いましょう。Koi先生の画風の変化を楽しむためにも1巻からの購入をおすすめしますが、アニメを3期まで見た方は7巻から読み始めても大きな問題はないでしょう。

まんがタイムKRコミックス ご注文はうさぎですか? 第1巻


アニメ

ごちうさのアニメは、第1期(2014)・第2期(2015)・第3期(2020)に加え、映画『Dear My Sister』(2018)・OVA『Sing For You』(2019)が製作されています。

前節で原作を激推ししてしまったため、アニメは原作の下位互換なのかと思われてしまうかもしれませんが、全くそんなことはありません。アニメ独自の魅力の一つに、綿密に練られた構成があります。原作のエピソードの順番を入れ替え、関連性の高い話をA・Bパートで接続するなどして展開をスムーズなものにしているのです。

例えば、アニメ1期第7羽*1「Call Me Sister.」では、Aパートに単行本1巻13話*2「ふりだしにもどる」を、Bパートに単行本2巻第五話*3「和菓子道 高き山頂は未だ見えず」を採用しています。前者はココアの失態にチノが機嫌を損ねる話、後者は千夜とシャロが揉める*4話であり、これらを接続することでこの回を通してキャラクター達の距離が一気に縮まるようになっているのです。

また、チノが志望校を決めるまでの流れも非常に上手く構成されています。原作では単行本5巻第10話「世界のすべては私の経験値」でお嬢様高校の説明会に出向いたチノが「行く高校はもう決めてあります」と発言しているのに対し、それに対応するアニメ3期第3羽「世界のすべては私の経験値」では「高校かぁ…」とまだ決定しかねている様子を見せています。これは、次の第4羽「あったかもしれない日常」*5でココアの学校の文化祭を見て回った帰り道で「わたし、決めました」と決意を表明するという展開を作るためです。この回のED後のCパートに単行本5巻第13話「メグ、トルネードを失う」のチノがココアの制服を試す一節を持ってくるのも含め、脚本の尋常でない精巧さが見て取れます。

シナリオだけではなく、オープニング曲・エンディング曲も見逃せません。「心ぴょんぴょん待ち」有名な1期OP「Daydream café」は畑亜貴さん作のキャッチーな歌詞が視聴者を木組みの街へと誘い、2期OP「ノーポイッ!」や3期OP「天空カフェテリア」は明るすぎるとも言える曲調でアニメを盛り上げます。ED曲はどれも跳ねるようなメロディーが心地よいですが、特に3期ED「なかよし!〇!なかよし!」は歌っているチマメ隊の変わらない友情を思わせる歌詞が本編で中学卒業を控える三人の関係の解像度を高めています。

キャラソン

原作とアニメは履修済みな方でも、キャラクターソングはあまり知らないという方は結構多いのではないでしょうか?それ、非常にもったいないです。「キャラソンって、作品の熱狂的なファンが聴くやつじゃないの?」とお思いのあなた、ごちうさに関しては間違っています。

ごちうさ関連のキャラソンは、リミックスやカバーを除いてもなんと160曲以上*6存在します。そして、ごちうさというコンテンツは「原作・アニメで提示されたテーマがキャラソンで深められキャラソンで生まれた概念が原作・アニメに逆輸入される」といったサイクルを繰り返すことで自ら成長しているのです。

リゼ&シャロのデュエット曲「Eを探す日常」を例に見て行きましょう。これは、2014年7月に発売された第1期キャラソンシリーズの第4弾に収録された曲で、PandaBoyさん作曲のエレクトロ・ポップな曲調に畑亜貴さんの詞を乗せたものです。まず注目したいのは曲名と歌詞で、お互いにLOVEが伝えきれないリゼ&シャロの関係を「まだL.O.V まだL.O.V」「Eがないね?ないね? 探しに行っちゃえば?」と表現し、サビ以外でそのLOVEの正体を遠回しに説明しきっているという名作となっています。ちなみにこの曲、主旋律にE(ミ)の音が使われていないんだそうです。ヤバすぎる。

youtu.be

この曲の発売後、同年12月号のきららMAXに掲載された話のタイトルに「Eを探す日常」が採用されました。その内容は、リゼ&シャロの二人がいろいろな部活の助っ人をして回り、謎のOG「ミス・エメラルド(青山翠)」についての情報を集める話です。……お気づきでしょうか?そうです、"E"meraldです。つまりKoi先生は、畑亜貴さんが生み出した「Eを探すリゼ&シャロ」という概念を漫画という形にしただけでなく、更なる言葉遊びを重ねてきたわけです。高度すぎる。

そして話はここで終わりません。3年以上の月日が経って、2018年2月号のきららMAXにて掲載された話に「Eを探し続ける日常」というタイトルが付けられました。その内容は、お嬢様学校の舞踏会にお呼ばれしたシャロが、いろいろな部活に勝負を挑まれつつリゼを探すというものです。リゼ&シャロの2人は、Eを探した結果としてEを見つけた訳ではなく、Eを探し続けているのです。この回によって、Koi先生は「L.O.Vという未完成な状態が補完されるか否かよりも、2人でEを探すという動作の方にこそ意味があるのだ」という、キャラソンに対する一つのアンサーを完成させた訳です。*7これはEを探すことを「日常」と表現した畑亜貴さんの見解と合致していると言えるでしょう。

いかがでしょう?たった1曲を知っているだけで原作の解像度がここまで高まるのです。他の曲も聴いてみたくなったのではないでしょうか?数百曲に及ぶごちうさ楽曲の大部分は公式によってYouTubeにアップロードされています。まずは色々聴いてみて、気に入った曲があればCDを購入するのもよいでしょう。以下におすすめの曲をいくつか挙げておきます。

また、以下のサイトではTVシリーズ放送5周年記念企画として音楽プロデューサー藤平氏とライター塚越氏によって全楽曲が解説されているので必見です。

gochiusa.com

 

エイプリルフール企画

毎年4月1日には、公式ホームページが特別仕様になります。それだけなら他のアニメ作品でもよくあることですが、ごちうさエイプリルフール企画(以下AF企画)のすごいところは、とにかく凝っている点とキャラソンなどへのメディア展開がある点です。

2014年のAF企画は、実写化でした。といってもココアやチノ達が実写化した訳ではなく、キービジュアルやキャラ紹介ページがリアルなうさぎの画像に差し替えられたのです。更には1期OP「Daydream café」の実写(うさぎ)MVまで公開されるなど、この頃から力が入っていたようです。

2015年のAF企画は、魔法少女チノでした。「ご注文は魔法少女ですか?」のロゴとともにKoi先生描きおろし魔法少女の衣装をまとったチノのイラストが現れ、なんとチノの声優水瀬いのりさん録りおろしのボイスまで用意されました。アクセスが集中してサイトが開かなくなるほどの人気を集めたこの企画は、同年夏のコミックマーケット88にてグッズ化およびキャラソン化し、翌年にはフィギュア化、2018年公開の映画『Dear My Sister』では映像化するなどの展開を見せました。

2016年のAF企画は、怪盗ラパンでした。恒例となっているKoi先生の描きおろしイラストや凝ったキャラクター・ストーリー設定に加え、謎解き要素もあったことで話題を集めました。魔法少女チノと同様グッズ化・キャラソン化・フィギュア化しています。こちらはネタとしては前年6月号のきららMAXに掲載された話「ラパン ザ オールナイト」が初出ですが、原作では青山ブルーマウンテン著の小説として登場するのに対し、本企画の方ではシャロが正体となっています。

2017年のAF企画はCHIMAME CHRONICLEでした。それぞれソーサラー・ガンナー・バーサーカーの衣装をまとったチノ・マヤ・メグの3人(もちろんKoi先生描きおろし)がトップページを飾り、ファンタジーRPG風のBGMとともに録りおろしボイスを聴くことができました。そして目玉はガチャ要素であり、「珈琲石」を投入して仲間を召喚することができました。本企画の衣装は2019年8月号のきららMAXに掲載された話「チマメクロニクル」にて、チマメ隊の3人がゲームセンターで最新RPGを体験した際のアバターとして再登場しています。

2018年のAF企画はDaydream☆SHOWです。「喫茶店アイドル育成ゲーム」というテーマで、描きおろし衣装の9人のキャラクター達から3人を選びユニットを組んで遊べるようになっていました。しかし、組めるユニットはココア・千夜・シャロからなる「Happine*」、リゼ・マヤ・メグからなる「Mistral」、チノ・モカ・青山からなる「Diva♪」の3つのみで、これ以外の組み合わせを選ぶとプロデュースに失敗してしまうという仕様でした。本企画も原作に転用されており、2020年5月号のきららMAXに掲載された話「CLOCKWORK RABBIT」でココア・チノ・リゼの3人が「Happine*」風の衣装を着用して登場しています。

2019年のAF企画はCLOCKWORK RABBITでした。舞台はなんと近未来の日本で、進学のため上京してきたチノがココアの家ホットベーカリーに住み込むことになるという原作とは逆の設定になっています。ホームページの各所からキーワードを集め、並べ替えて入力するとご褒美がもらえるという仕様でしたが、その過程でチノの母親の名前「香風サキ」が初公開されるというただならぬ企画でした。原作では2020年5月号のきららMAX掲載「CLOCKWORK RABBIT」にてメグが階段を踏み外した際にこちらの世界に迷い込むという形で登場しています。

2020年は例年と異なり4月1日の企画実施が見送られ、代わりに歴代のAF企画をテーマにした新曲CD「Selection of April Fool's Day」の発売日である4月22日にRegene Play Rabbitsと題された企画が実施されました。ポストアポカリプスな世界で旧時代の音楽再生機器を見つけたチノ達が、過去の音楽を聴くためにポメラニアンのティッピーと共にCDを探すという設定になっています。集めたCDで新曲の試聴ができる他、パスワード欄にアニメ3期のテーマである「BLOOM」を入力することで「香風咲」(サキの漢字表記が初公開)からのメッセージが読めるようになっていました。まさか「BLOOM(花咲く)」に隠された意味がAF企画で明かされるとは……。

ちなみに「Selection of April Fool's Day」には魔法少女チノ×怪盗ラパンによるデュエット曲やDaydream☆SHOWの各ユニットによる曲、CHIMAME CHRONICLEやCLOCKWORK RABBITをテーマにした曲のほか、各AF企画の特設HPでしか聞けなかったBGMなどが収録されています。こういった意味でも2020年は歴代のAF企画が整理された年になりました。

www.youtube.com

2021年のAF企画はSeven Rabbits Sinsでした。ココア・チノ・リゼ・千夜・シャロ・マヤ・メグの7人が「七つの大罪」に当てはめられ、彼女らが住み着く洋館に一匹の猫が迷い込むという設定になっています。ストーリーを進めると、寝る前に青山ブルーマウンテン著の本を読んだフユの夢だったことがわかるようになっていました。アニメ未登場のフユが重要人物として登場するという予想外の展開になった本企画は、2021年12月号のきららMAX掲載「Seven Rabbits Sins」にて原作にも取り入れられました。

2022年のAF企画はTAKE OUT BLUE BIRDでした。『幸せの青い鳥』がモチーフで、エル・ナツメの2人が青い鳥を探す過程で身近な幸せを知るというストーリーになっています。昨年に続いてフユが続投されるだけでなく、ココア母の本名が「ちよこ」*9であることが確定し、更にはエル・ナツメの声優がそれぞれ上田麗奈さん・種崎敦美さんであることが発表されるというアニメ4期を期待させる企画になっていました。

ここまでお読みいただければ、ごちうさエイプリルフールのすごさをお分かりいただけたでしょう。毎年原作者による描きおろしイラストが公開され、ホームページ内には必ず何かしらの遊べる要素があり、多くの重大情報が発表され、キャラソン化やグッズ化および原作への導入もあるAF企画は他作品ではなかなか見られません。

ファンの間でも各企画が「クロラビ」「リプラビ」「ナナラビ」「ごちハピ」といった略称で呼ばれる*10などして親しまれ、果たしてこれらの世界たちは本編とどのような関係にあるのか(並行世界なのか同一世界線なのか)議論されています。特にメグは、毎年意味深な言動を残していたり*11、衣装が独特だったり*12、原作でもクロラビの世界に迷い込んでいたり*13するため、考察の対象になっています。

まとめ

ここまでごちうさというコンテンツを原作・アニメ・キャラソン・AF企画の4要素に絞って見渡してきましたが、一番伝えたいのは各要素の関係が非常に密接であり、相互に補完し合っているということです。作品の最前線である原作で描かれた日常が巧みに再構成されてアニメ化し、キャラソンが製作されることで各キャラの心情を深め、「あったかもしれない日常」がAF企画で描かれることでコンテンツの展開が加速し、こうして生まれた諸概念が原作に逆輸入される。この構造がある以上、ごちうさというコンテンツを楽しむ上で各要素はどれも欠かせません

この記事を読んでもっとごちうさを知りたい!と思っていただけた方に向けて、おすすめのアイテムをまとめておきます。

また、ごちうさというコンテンツにはこれら以外にもラジオ・イベント・グッズ・各種インタビューなど多くの楽しめる要素があります。これまで東京、大阪、新潟、福岡で開催されているご注文はうさぎですか?展 Café Lumière」も、次は名古屋での開催が決定しています。今後の展開を楽しみにしながら、共に良きごちうさライフを送りましょう!

 

*1:アニメでは「第n羽」表記が用いられます。

*2:単行本は1巻のみ話数表記に「第」が付きません。

*3:2巻のみ「第(漢数字)話」表記です。

*4:シャロの勘違いだったようですが。

*5:ガチ神回なので視聴をおすすめします。

*6:ゆーらしの調べ

*7:ちなみにこの回は狩手結良が再登場を果たす超重要回でもあります。

*8:YouTubeでは試聴動画のみ公開。アニメ3期Blue-ray&DVD第3巻特典です。

*9:漢字表記の有無はまだ不明です。来年のAF企画に期待?

*10:一応すべて公式の略称です。命名規則がバラバラ……

*11:リプラビでの記憶喪失、ナナラビの「国とか滅ぼしちゃいます」発言、ごちハピの「しんぞういしょく」発言

*12:リプラビでは1人だけ天使の羽のようなものを纏っています。

*13:単行本9巻p74,75のイラストは必見です。