「step.1-2『席順は?』 」解説と制作裏話
はじめに
エクトぷらずま (@Ecto__PLASMA) です。
この記事では、先日東京大学きらら同好会Advent Calendar 2023の記事として投稿した推理パズル「step.1-2『席順は?』 」の解法を解説しています。
この問題を解いていたが、どうしても矛盾が発生してしまう、手が止まってしまったという方は、是非ご活用ください。(問題チェックを務めた3人は全員東大生で普段からある程度パズルに触れてもいる人でもありますが、解くのに30分~90分かかったそうなので、結構難しいと思います。)
やっぱり自力で解きたいという方は、ネタバレを踏まないようご注意ください。
また、解説とは関係ないですが、最後に少し、このパズルがどんな風に作られたのかについても紹介します。
解説
Step 1
はじめに、1年2組教室の席配置は左右対称であることを意識しながら解くと、少し考えやすくなると思います。8人の生徒のうち、席の左右の位置関係に言及しているのは、席が窓際にあると言っている高橋菜々恵さんだけです。ですから、高橋さんの情報が使えるようになるまでは、左右対称な位置にある2つの席どうしを同一視して考えることにすると、考える必要のあるパターンが減ることになり、わかりやすくなるでしょう。
Step 2
この問題のようなパズルを解き進める際の基本は、「どの情報が最も強い制約になっているか?」を考えることです。
8人の情報のうち最も強い制約を与えるのは、25個の席すべてに影響する情報である大谷周さんの発言 (各列背の順) です。まずはこのヒントから考えたいところですが、このヒントの単体は具体的な生徒の席配置に言及しているものではないため、他のヒントと組み合わせて考える必要があります。
Step 3
次に強い制約を与えると考えられるのは、5人の生徒の位置関係を指定する内容の、今井千尋さん、菊池淡雪さん、佐々木陽菜さん、の3人のコメントです。3つとも「自分の前後左右の席の生徒は、すべてある条件を満たす」という形の制約に対応します。これらについて考えるため、まずはそれぞれの条件を満たす生徒を列挙すると、以下のようになります。
- 運動部: 小鹿野真秀, 堀口素直, 遠藤悠里, 藤井万美, 久保田あや華, 内田麻理絵, 増田青, 大谷周 (8人)
- 名前が漢字3文字: 千石冠, 椿森幸, 岩崎敬, 清水翠, 増田青, 大谷周 (6人)
- 名前に「田」の字が入る: 久保田あや華, 島田美弥子, 内田麻理絵, 増田青 (4人)
Step 4
一番強そうな制約は、条件を満たす人が4人しかいない菊池さんの発言ですね。4人のうち菊池さんより背が低いのは久保田さんしかいないことと合わせ、菊池さんの周囲の席順が、図1のように部分的に確定します。
ただ、これ以上のことは言えません。
Step 5
次に、佐々木さんのコメントについて考えてみましょう。一見、佐々木さんの前後左右に席がある4人の組み合わせは、6C4=15通りあるように思えます。
ここで着目するべきは、名前が漢字3文字の6人のうち、清水・増田・大谷の3人がクラスで最も背が高い3人でもあることです。これを念頭に、佐々木さんの席周辺の席順を絞ることができます。
例として、佐々木さんの前の席が千石冠さんの席だとするとどうなるか考えてみましょう。千石さんの席は必ず最前列なので、佐々木さんは前から2個目の席に入ります。自分自身より背が高い生徒が3人いない清水・増田・大谷の3人は、前から2個目の席には入らないので、佐々木さんの左右は椿森さん、岩崎さんになります。同様に考え、佐々木さんの真後ろには清水さんが入り、そのさらに真後ろに、順に増田さん、大谷さんと入ることが分かります。
ここで矛盾が生じます。岩崎敬さんの発言から、椿森さんと十倉栄依子さんの席は隣同士です。しかし、十倉さんはクラスで4番目に背が高いため、その後ろに座る可能性が残っている生徒がいません!よって、佐々木さんの前に千石さんが座ることはありえないことが分かりました。
岩崎さんの発言もあわせて、同様に考えていくと、佐々木さんの周辺の生徒が次のように決まり、かつ佐々木さんが後ろから2列目の席に座ることが分かります。
Step 6
増田さんが図1と図3の両方に登場することに注意しながら、以上の結果を組み合わせると、ここまで確定します。
Step 7
次に、今井さんの発言について考えましょう。「今井さんの前後左右に生徒が座る席がある」という情報だけから、今井さんの席の可能性を、5x5列に並んだ25席からその中央3x3列の9席に絞ることができます。この9つの席のうち今井さんの席である可能性が残っているのは3つだけですが、椿森・十倉の2人は運動部員ではないため、今井さんの座席が久保田さんの前に確定します。
Step 8
このステップが一番難しいと思います。
ここまでの考察を踏まえると、今井さんの前・左・右の3つの席に入る可能性が残っている生徒は、小鹿野・堀口・遠藤・藤井の4人です。一見絞り切れないように見えますが、少し視野を広げてみましょう。
図5のAの位置に入る可能性が残っている生徒のうち最も背が高いのは、152cmの遠藤さんと藤井さんです。よって、Bの位置に入る生徒の身長も、152cm以下であることが分かります。しかし、身長が152cm以下の生徒は5人しかいません!このことから、AとBを合わせた5つの席に、千石・小鹿野・堀口・遠藤・藤井の5人が順不同で入ることが分かります。
Step 9
以上のことを踏まえて、次に関根ももかさんの発言に注目しましょう。図7をふまえれば、関根さんが入る可能性があるのは両端の列に限られることが分かります。さらに、もし関根さんが岩崎さんと同じ列に入ったとすると、その列の残りの席に入る可能性がある生徒が、出席番号1番の一之瀬花名さんと8番の加藤比呂さんの2人しかいません!これは矛盾です。
よって、関根さんはもう片方の端の列に入ることが分かり、これと連動して小鹿野・遠藤の2人の席も確定します。Step 8の考察を踏まえないと、関根さんの入る列がまだ確定しない (5番の遠藤さんと7番の小鹿野さんが入る可能性が残っている) のがポイントです。
Step 10
後は堀口素直さんの発言の条件と背の順の条件が満たされるように生徒を配置していき、最後に高橋さんが窓際の席に行くように適宜左右を入れ替えることで、解答が得られます。
完成するまでのあれこれ
- ~11月22日。東京大学駒場祭 (11/24~26) における、東大パズル同好会会員としての出展に向けてパズルを作ったりしていた。この時点で席替えをテーマにしたパズルの構想はあったが、駒場祭に実装が間に合わず。
- 11月23日。スロスタアニメ8話の、花名に1年2組の生徒を紹介するシーンを素材にした音MADを見ていた時に、席替えのアイデアをスロスタと組み合わせることを思い付く。
生徒の設定を考えずに済む!
- 11月24日~27日。駒場祭での接客の合間とかに作業して問題を完成させる。
- 11月27日~29日。あすたーいずむさんに初期案をチェックしてもらった結果、想定よりも簡単に解けるルートが見つかったため調整。テスターの重要性を感じる。ありがとうございます。
- 11月30日朝。きら同Discordでヒント文執筆の依頼を投げる。ダメ元だったが、なんと3人も乗ってくれた。
- 11月30日昼。ナンさんが各生徒の原作中の会話シーンをまとめた強い資料を投下。8巻の今井さんのセリフとか良く見つけましたね。ありがとうございます。
- 12月3日。Asamaさんが全てのヒントを制作。大谷さんのセリフが位置関係への言及を回避しつつ冠への言及を残しているの凄くうまくないですか?ちゃんとしたヒント文があるだけでこうも見違えるようになるとは...。本当にありがとうございます。
- 12月10日。dfさんが問題チェックしてくれました。この問題を作る際に、dfさんが過去に発表した、きらら作品の登場人物(のような名前をした人々)が登場するパズルを参考にしました。ありがとうございます。
- 12月12日。まいすさんの問題チェックの結果、誤解が生じうる表現を2つ修正。スロスタを一切知らない人にチェックさせたのは正解でした。ありがとうございます。
協力者一人一人の分だけ良いものが作れたと思います。作っててとても楽しかったです。