東京大学きらら同好会

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「なるコティズム」解説

東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2022の5日目の記事です。

・昨日はひろみね(峰浦まひろ)さんによる「キャラソンからチノの成長を振り返る」でした。「ごちうさ」のキャラクターソングが、単にキャラクターの可愛さを引き出すだけに留まらず、原作の展開をしっかりと理解した上で作り込まれていることがわかる記事です。是非この記事を読んで、原作者Koi先生だけでなく様々な優れたクリエーターの方の才能を集めて作られている「ごちうさ」の世界の深さを味わってみてください。

・明日は、ふぁぼんさんによる「誰が「あのバンド」を書いたのか?」が予定されています。ちょっとミステリっぽいタイトルですね。誰がコマドリを殺したのか?なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?ご注文はうさぎですか?明日の記事は一体どういう内容になるのでしょうか?

adventar.org

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きらら同好会のK. 汝水(@tactfully28)です。今年夏にリリースされたきらら同好会の合同誌「Micare vol.2」において、一次創作の4コマ漫画「なるコティズム」などを寄稿させて頂きました。

utkiraracircle.github.io

「なるコティズム」は、園芸部員の汐・ココ・なるの三人を描いた部活コメディ漫画です。

今回は拙作「なるコティズム」について、ネタバレ込みで解説を行っていきます。

1. タイトルについて

タイトルの本当の由来は、英単語「narcotism」です。ロゴの英題は、ダミーの英題「Naru's court-ism」と本来の英題「Narcotism」の両方にとれるよう黒塗りが配置されています。

2. 第一話の構成について

1話の前半は汐とココの二人のやり取りを描きました。登場人物を2人に絞って、読者にはまず倫理観の欠落したココに汐がツッコむという関係性を理解してもらおうという狙いです。ただ、一方的に汐がツッコむのではなく、汐の感覚がずれているという様子も描いて後の展開の布石としました。
1話の後半では、強キャラ"なる"がやってきたことによるパワーバランスの変化に焦点を当てています。なるは登場するなりめちゃくちゃな言動をしていきます。汐はそれなりの優しさと天然ボケの持ち主であり、"なる"に少し理解を示してしまいます。こうしてココにツッコミを強いる環境が出来上がり、ツッコミ役が交代します。ココは育てたい植物といってもせいぜいラフレシア止まりの人間であり、大麻を育てたがる人間の前ではこのように振舞わざるを得ないのです。

3. 殺人への意識について: ココ

ココもなるも作中で殺人を肯定していますが、殺人への考え方は二人の間で違います。
ココの中心的な性格・思想は「利己主義」です。無神論者であるココは基本的に損得勘定で行動を考えており、自分が得をするのであればヒトへの遺伝子操作も殺人も肯定します。その一方で、真っ当な生物らしく自らの死を恐れています。従って、死刑になることは勿論、禁錮や懲役を通じて実質的に寿命が減ることも恐れています。このように刑罰を恐れる気持ちこそが、ココにとって大麻栽培に反対する理由の根源でした。刑罰への恐怖は、3話の国旗を燃やすくだりでも現れています。
ココは刑罰さえなければ何をしてもよいと考えており、これが法律の整備されていない分野である遺伝子操作への興味につながっています。また、政治家になって姥捨を合法化することで、法を恐れることなく老人を殺害し、年金や医療保険の負担を軽くしようと考えています。政治家として権力を握れば検察に圧力を加えて逮捕を回避できるだろうという考えもあるでしょう。

4. 殺人への意識について: なる

なるの中心的な性格・思想は「刹那主義」です。なるは、自分の未来に何の希望も期待も抱いておらず、長期的に何らかの目的を達成しようという考えを一切持っていません。「今、この瞬間」だけでも楽しく生きていたいと思っているのですが、思いつく限りのことはやり尽くしてしまい、毎日を退屈に生きています。15歳にして生きることのほとんどに飽きているものの、麻薬には何か未体験の快感があるはずだと僅かな期待を抱いており、とりわけ麻薬の入門編、ゲートウェードラッグとして大麻に興味を抱いています。ですが、それも深い執着があるわけでもなく、大麻栽培の道半ばで逮捕されてもそれはそれで構わない、未来の自分に何が起ころうと人ごとであって「今、この私」には関係がないと考えています。
なるは刑罰を恐れていません。大麻にしても、コソコソ隠れる真似はせず屋外で栽培するつもりでした。また、肥料を作るために殺人を画策した際も、まず隠蔽のことを考えるココと異なり、なるは白昼堂々人を殺して特に問題ないと思っていました。なるにとって、死は退屈で無価値な毎日から永久に解放してくれる「救済」だからです。作中で自殺のために屋上へ向かおうとした際も鼻歌混じりでした。
このように書くと、なるはどうしようもなくヤバい人のように思われるかもしれません。しかし、なるにはココの利己主義のような邪心はほぼありません。大麻はあくまで自分と姉が使うためのもので、売るために育てるのではありません。殺人も救済になるからOKなだけで、窃盗・恐喝・詐欺・贈収賄などは、誰にもバレそうになかったとしても(ココと違って)手を染めないでしょう。人の迷惑になるからです。「自分がされて嫌なことは人にしない」という点においては、倫理を大切にする非常に常識的なキャラといえます。
作中でも、強情さのない素直な性格が根っこに窺えるように描いたつもりです。制止されれば従うからこそ、今まで大した犯罪を犯すことなく無事に高校に入学することができたのです。こう考えると、なるは清らかな心の持ち主といってもいいのではないでしょうか。

5. 余談

きらら同好会は、11月にコミックアカデミーという同人誌即売会に出展しました。その際、「2022ノーベル物理学賞受賞 Aspect絶賛!」と書いたポップを作ってきらら同好会のブースに置かせてもらおうと考えていたのですが、制作時間を確保できず、実現しませんでした。

6. おわりに

きらら同好会の同人活動には執筆規約があるのですが、私はその存在を「なるコティズム」を描き終わった後、校正期間に入ってから知りました。読んでみたところ、そこには「公序良俗・法令に反することを書いてはならない」という旨が書かれており、驚愕しました。公序良俗や法令に反することを書いてもいいと勘違いしていたからです。結局、何箇所も黒塗りにしたのでまあいいかな、と思ってあの形で載せてもらいました。
これからきらら同好会の同人誌に寄稿される方は、公序良俗や法令に反することを書かないよう予めよく気を付けていただければと思います。
それでは。